研究課題
申請者は、IL-6ファミリーサイトカイン(IL6-FC)群及び骨形成因子群が相乗的に作用して神経幹細胞のアストロサイト分化を誘導することを明らかにした。しかし生体内において、神経幹細胞が実際にこれらアストロサイト誘導性サイトカインのシグナルを受け取っているのか、さらに細胞のどの部分で受け取っているかについては不明のままである。そこで本研究では、サイトカインシグナル入力の際に、受容体膜タンパク質と転写因子が会合することを利用したこれまでにない二分子蛍光補完(BiFC)法により、異なるサイトカインシグナルの入力同時観察、及びその入力部位同定を行う技術を開発する。さらにこの結果と申請者らのこれまでの成果を統合して、アストロサイト分化能獲得から分化まで、その一連の過程を説明する概念の提示を目指す。予備的実験より、軟膜細胞の培養上清存在下に神経幹細胞を培養することでアストロサイトへの劇的な分化が観察されたため、軟膜細胞がIL6-FC発現細胞であるかを検討した。IL6-FCに応答することが明らかなアストロサイト特異的GFAP遺伝子プロモーターを持つレポーターコンストラクトを神経幹細胞に導入し、軟膜細胞培養上清に対してレポーターアッセイを行った。軟膜細胞培養上清によってレポーター活性の上昇が観察されたが、この活性は全てのIL6-FCのシグナル伝達を阻害できるgp130阻害抗体や優性抑制型STAT3によって抑制されたため、軟膜細胞培養上清中のアストロサイト誘導因子がIL6-FCであることが示唆された。そこで、実際にIL6-FCが軟膜細胞において発現されているかを同定するために、各IL6-FCに対するプライマーを用いてRT-PCR法を行った結果、LIF,CNTF,CLCを高発現していることを同定した。今後、BiFC法を用いてこれらサイトカインシグナル入力の観察及び入力部位の同定を行う。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (31件) 図書 (1件)
Nature
巻: 468 ページ: 443-446
Cell Stem Cell
巻: 7 ページ: 78-89
Journal of Cell Biology
巻: 189 ページ: 159-170
Current Opinion in Neurobiology
巻: 20 ページ: 408-415
Development, Growth & Differentiation
巻: 52 ページ: 493-504
Journal of Clinical Investigation
巻: 120 ページ: 3255-3266