研究課題
マウス大脳バレル皮質錐体細胞において、2光子イメージングを用いたin vivoホールセル記録とカルシウムイメージングを行い、個々の感覚シナプス入力、すなわち洞毛からの感覚入力が、細胞内および樹状突起内においてどのように分布しているのかを直接可視化する。感覚入力に対して、個々のシナプス入力がどのような空間分布で入力しているかについての解析を行った。大脳体性感覚野バレル皮質の第2/3層錐体細胞からホールセル記録を行い、基底樹状突起および尖樹状突起においてカルシウムイメージングにより単一スパインレベルのシナプス入力を可視化し、自発活動および洞毛刺激に対する応答を記録した。活動するスパインを同一細胞内の様々な樹状突起で観察したところ、異なる樹状突起の間で入力頻度にばらつきがあり、多くの入力を受けている樹状突起分枝とそうでないものがあることが明らかとなった。また、個々のスパインレベルで見ると、約80%の入力がわずか25%のスパインに限局している事がわかった。すなわち、感覚情報の多くは限られたスパインにのみ入力しているということを示唆する。さらに、これらの入力分布を詳細に解析したところ、空間的に近傍に位置するスパインは同期した入力を受ける確率が高いことが分かった。このことは、共通入力を受けているかお互いにシナプス結合を作って局所回路を形成しているニューロン集団は、受け手側ニューロンの樹状突起上で近い位置に入力する傾向があるということであり、神経回路が1シナプスのレベルで精緻に配線されていることを示す直接の証拠である。近傍のスパインでは、シナプス可塑性が同期して起こりやすいというスライス標本での先行研究とも一致する結果であり、興味深い。
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