研究課題
神経回路の再生を大きな目標として、光ガイドによる神経突起の伸長制御を検討した。神経栄養因子(BDNF)の受容体TrkBは、BDNF結合に伴い細胞内領域チロシンキナーゼの自己リン酸化を引きおこす。ついでMAPキナーゼなどの細胞内情報伝達が活性化されて神経突起伸長が促進される。植物や真菌類には、光刺激を細胞内代謝反応に変換する様々な分子が存在する。そのような光受容体を用いてTrkB活性の光制御を検討した。光受容体、TrkB細胞内領域、mycエピトープを融合させた新規蛋白質の発現ベクターを構築した。この新規融合蛋白質をCOS-7あるいはHEK293T細胞に発現させた。2日培養後、培養皿底面から光照射(光強度40μmol/m^2/sec)を30分行った。光刺激後、細胞を可溶化して抗myc抗体による免疫沈降を行った。免疫沈降物において新規融合蛋白質は光照射に伴いチロシンリン酸化を増加させた。またリン酸化Trk特異抗体(pY706/707TrkB)による検出でも融合蛋白質の自己リン酸化増加が認められた。さらに融合蛋白質を導入したHEK293T細胞において、リン酸化されたMAPキナーゼ、すなわち活性化型MAPキナーゼが光照射により増加した。一方、光受容能を欠いた変異型受容体とTrkBの融合蛋白質においては、光照射に伴う自己リン酸化の増加やMAPキナーゼの活性化は認められなかった。これらの結果から新規融合蛋白質は光受容能を持ち、Trkとその細胞内情報伝達を活性化すると考えられた。現在はこの融合蛋白質を神経細胞に発現させ、光照射に伴う神経突起伸長促進の有無を検討している。
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Acta Derm Venereol
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