本年度は、提出した計画書に基づいて以下の点について検討を行った。 (1)昨年度の実験でケミカルシフトイメージング(CSI)撮像時に課題として残った、「ヒトCSI測定による水ピークのケミカルシフトの分裂がかなりの部分で抑制されるが、シム以外のなんらかの要因のためか完全に水ピークの分裂が抑えきれない」点について検討した。その結果、マトリックスサイズと、ROIの外側の信号をスライス励起して消去すること(ovs=off)、水消去パルスの後のスポイラー(余分な励起信号を消すためのグラディエント)をオフ(sup=off) にして撮像条件を設定する必要があることが分かった。 (2)ヒト視覚刺激の実験で、機能的MRI(fMRI)の血流と血液の酸素化率に依存するの活動計測法-BOLD法-と、本研究で提案する代謝依存性の機能的磁気共鳴スペクトル法(fMRS)の信号の時系列変化の相関を検討した。実験は3名の被験者を用いて行い、心電図計測や呼吸速度の計測をBOLD-fMRIならびにfMRSの測定と同時に行った。その結果、BOLD-fMRI信号とfMRSの信号に良い相関がみられた被験者では、fMRS信号への自律神経の影響が少なく、相関が見られなかった被験者では自律神経の影響が大きいことが分かった。 (3)fMRSを局所脳内温度計測法(FTMRI)の確立へ向けて発展させるための理論的考察については、確立するとこまでは行かなかった。この原因は上記(1)及び(2)特に(2)の自律神経の影響に対する考察がさらに必要になったため現在この問題に取り組んでいる。
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