本研究では、2006年に発案された新しいQSI(q-space MRI}法について、生体ラット脳を対象としたin vivo MRIでの有用性、特にfMRIへの実用性を探ることを目的とし、種々の基礎的検討を行った。本法は異なる数個のb値で収集される拡散強調画像の解析において、確立統計論に関する数学的手法を応用するものである。これにより従来のQSIに比して短い撮像時間で脳内局所の水分子拡散にかかわる要約統計量、すなわち尖度や分散が求められるため、生体ラット脳を対象としたMRIに応用し、虚血における経時的変化や神経賦活に伴うイオンチャネルの開口に伴って細胞内外に生じる制限拡散の変化についてMRIによる可視化を試みた。 本年度に実施した基礎検討の結果から、本法では従来のQSI法に比して短時間でのデータ収集が可能であり、また比較的低いb値の印加によって必要な画像データが得られることから、生体小動物を対象とした実験利用での有用性も示唆された。また実験動物専用装置のような高磁場、高傾斜磁場強度をもたない臨床装置での応用についても可能性が示された。一方、原理的に収集データのSN比が十分でないことや、生体に不可避のバルクモーションに影響を受けやすいこと、神経活動を視覚化する上で重要となる時間分解能が悪いことなど、さらなる検討と最適化が必要であることも明示された。 本年度に導入した末梢神経電流刺激装置や病理解析用の機材を有効に活用し、次年度は上記において明確となったこれら問題点について、引き続き検討をする予定である。
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