研究概要 |
本研究では,ラット脳における神経賦活領域の可視化を制限拡散に鋭敏な新しい拡散MRI撮像技術,すなわち比較的小さな値の数個のb値を用いることで撮像(データ収集)の高速化が図れるq-spaceimaging(以下,QSI)にて捕らえることを目的とし,初年度には実験小動物用超伝導磁石型7T-MRI装置を用いた基礎検討を実施した.今年度はその成果として得られた課題の解決を目的として,本学に新規導入された永久磁石型1.5T-MRI装置を使用した新たな画像解析実験系を構築し,継続的に研究を遂行した. 前年度に実施した超高磁場MRI装置におけるQSIでは,数個のb値について得られた拡散MRIデータから,従来のフーリエ変換法によるQSIで得られた各種要約統計量の算出を実現し,それらを用いたラット脳のマッピングが可能であることを示した.一方,明示された課題の一つは,同法が従来法に比して大幅にデータ収集時間を短縮することが可能である反面,装置性能や撮像シーケンスの制限に伴う画質の低下であり,もう一つは本法により描出される神経賦活領域の検証手段として,他の脳機能的MRI法との比較検証が不可欠となったことである,前者については,本研究課題の実施期間において容易に解決できないことから撮像条件およびデータ処理法の最適化にとどめ,後者については神経細胞の膜透過性を直接反映するfMRI法として知られる「神経賦活マンガン造影MRI法(以下,AIMMRI)」に着眼し,さらに光ファイバー式レーザー血流量計を用いた局所脳血流量との同時計測を実現する実験環境を構築した.一方,本研究課題の実施期間が2年間であることに加え,同検討を実施する新たな環境として磁化率効果の影響を受けにくい新たな実験系の構築が必要となっため,最終年度となる本年度の成果はその目的を十分に達するには至らなかった.
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