研究課題/領域番号 |
22650089
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
和多 和宏 北海道大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (70451408)
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キーワード | コミュニケーション障害 / 吃音 / 感覚運動学習 / ソングバード / 学習臨界期 / 動物モデル / 時系列制御 / 発声学習 |
研究概要 |
本研究の目的は、発話コミュニケーション障害「吃音」動物モデルの確立、及びその研究応用である。会話によるコミュニケーションは、人間として生きていく上で重要な行為である。しかし、「吃音(どもりstuttering)」では、思考したことを言葉として表出できない、会話が流暢にできないといった問題が起こる。「吃音」は世界中の全ての言語において人口の1%でみられる。発症原因は未だ明らかにされておらず、その治療方法も確立していない。この現状を踏まえ今回、吃音研究の推進を可能とする新規実験動物モデルの作成を試み、それを利用した新たな吃音発症機序の理解・治療の確立を目指す。その研究戦略として、音声発声学習能をもつ鳴禽類ソングバードを用いている。ソングバード脳内にはヒト言語野に相当する神経核群が存在し、これらによって構成される神経回路は近年の研究により哺乳類と多くの点で相同な機能をもっていることが明らかにされている。 H22年度から、後天的環境要因探索からの検証として、聴覚遅延フィードバック[Delayed Auditory Feedback(DAF)]環境による、音声発声学習異常とその固定化の発声行動への影響を検証する実験を施行している。DAF環境では、動物個体が発声した音声を数十ミリ秒から200ミリ秒の遅延を与えて聴覚入力させことによって、発声出力と聴覚入力との符号性のアンバランスが誘発される。これまでの結果、学習臨界期中の幼鳥をDAF環境で飼育すると、発声パターン中に繰り返し音素が生成される動物個体が現れることが分かってきた。またこの現象が観察される割合を明らかにすべく現在解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究提案の申請時に記述した研究計画通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度においては、当初からの研究計画通り、以下の3点にフォーカスした研究を進めていく。 (i)後天的環境要因探索からの検証の継続 (ii)遺伝的要因からの検証実験の継続 (iii)行動薬理実験からのソングバード「吃音」様症状の行動表現型妥当性の検証、特にヒト吃音に影響が報告されている薬物等の薬理行動学実験による吃音様症状への影響を検証する。
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