研究課題/領域番号 |
22650091
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
中田 和人 筑波大学, 生命環境系, 教授 (80323244)
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キーワード | ミトコンドリア / ミトコンドリアDNA / 突然変異 / エネルギー代謝異常 / モデルマウス |
研究概要 |
病原性突然変異型mtDNAの蓄積が様々な病気(ミトコンドリア病、神経変性疾患、がん、糖尿病、さらには老化)などに関与している可能性が示唆され大きな注目を集めている。しかし、このようなミトコシドリア関連疾患の病態発症研究では変異型mtDNAの病原性探索に終始し、それらの病型を特徴づける「臓器間における変異型mtDNAの蓄積の差異」については、その分子機構はおろか、存在すら証明されていない。本研究では、野生型ミトコンドリアゲノム(mtDNA)と病原性欠失型mtDNAを混在させたマウスにおいて、欠失型mtDNAの蓄積が臓器間で異なるという現象の発見を発端に、この「臓器間における欠失型mtDNAの蓄積の差異」を生み出す生体機構を解明し、多様なミトコンドリア関連疾患の病態発症研究に新たな視点の創成を目指している。 今年度は前年度の実験結果を受け、胚時期-出生-成長という時間軸における欠失型mtDNA動態と病態発症特性について検討した。その結果、病原性欠失型mtDNAを混在させたマウスにおいて、胚時期には造血系と肝臓における病態が発症し、このような個体は生後早期に死亡することが分かった。興味深いことに、このような新生児には致死を逃れる個体が少なからず存在し、これらでは造血系や肝臓における欠失型mtDNAの含有率は低下することが分かった。このような個体は成長とともに欠失型mtDNAが多臓器において蓄積し、結果として典型的なミトコンドリア病の病態を呈することが分かった。すなわち、本研究結果は、単一の欠失型mtDNAは胚時期-出生-成長という時間軸においてその蓄積動態を変化させ、異なる病型の原因になる可能性を示唆している。さらに、欠失型mtDNAの動態変化に影響を及ぼす要因の1つとして細胞内品質管理に着目し、オートファジー関連因子の破壊マウスにおけるミトコンドリアの形態機能変化に関する実験を行い、一定の成果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
病原性欠失型mtDNAの臓器含有動態変化を病型形成の原因として考察できる実験成果を得ていることは本研究の目的達成のために極めて重要である。一方、病原性欠失型mtDNAの臓器含有動態変化を制御する分子機構の解明については、主要因の特的には至っていない。しかし、細胞内の品質管理/ミトコンドリアバイオジェネシスへの着想により大きな進展が見込まれる。このため、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
細胞内の品質管理/ミトコンドリアバイオジェネシスに着目することで、病原性欠失型mtDNAの臓器含有動態変化を制御する分子機構を明らかにしたい。胚時期-出生-成長という時間軸における欠失型mtDNA動態と病態発症特性についても詳細は病理を追求したい。
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