本年度は、粘膜上皮の「足場」となる「パリレン基底膜」作製工程の確立を行った。 2cm角のシリコンウェハーに4~6個の複数の領域をもうけて、絨毛様構造を有するParylene基底膜を作製した。フォトレジストをスピンコートによりシリコンウェハー上に塗布し、プリベーク(加熱)によりレジストを固定した。次いで、投影露光により適切な波長の光を照射し、レジストと反応させた(感光した部分が残る、いわゆるネガレジストを使用した)。露光したウェハーを現像液に浸し余分な部位のレジストを除去し、さらに、リンス液で数回すすぎ不要部分を完全に除去、ポストベーク(加熱)によりリンス液を除去した。エッチングにより不要部分を除去し陥凹パターンを成形レ(レジストの残っている部位はエッチングにより除去されない)、最後に溶剤によりレジストを完全に除去した。Paryleneを真空蒸着によって、シリコンウェハー上に成膜した。 この上に、小腸上皮細胞株IEC-6を培養し、実体顕微鏡下で観察を行った。小腸絨毛様構造の基底側には、細胞が道に増殖していたが、絨毛側面(必ずしも十分な観察はできなかった)および絨毛様構造頂部では、細胞の分布は不均一であった。このことから、均等な細胞接着と増殖にはフィブロネクチンなどの基底膜タンパクの塗布が必要であることが予想された。 基底膜様構造物であるParyleneに物質交換のための小孔をあける工夫であるが、微粒子の電着による凹凸面の形成を試みたが、均一に付着する条件を見いだせなかった。そのため、基材の変更も含めた解決策を模索する必要があると考えられた。
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