研究概要 |
本年度は,人工脂質二重層形成実験ならびに画像計測技術の開発を実施した.人工脂質二重層形成実験では,2つの近接する直径数百μm程度の「くぼみ」をつけたアクリル製チャンバの中に,リン脂質(DPhPC:Diphytanoyl Phosphatidylcholine,Avanti社)を溶かしたHexadecane溶液(10mM,DPhPC)を用意した.次に水溶液200nlをこの溶液に2回にわたって注入し,2個の液滴を作成した.その後,これらの液滴をチャンバ底面のそれぞれのくぼみに移動させると,どちらの液滴もくぼみに落ち,液滴が十分に大きければ互いに接触し,接触面に脂質二重層が形成される.脂質二重膜は,膜の両側に存在する水溶液のpH,イオン強度,電位差,浸透圧差など,さまざまな要因に影響されその安定性が変化することが知られている.そこで室温(22~26℃)のもとで,KC1(1M)およびMOPS(10mM)の組成からなる液滴を前述の脂質溶液で満たしたチャンバ内で接触させた.その結果,2個の液滴は独立した状態を保った.液滴を作成して40分後に液滴を結合させたところ,2個の液滴はその後6時間近くにわたって結合したまま独立した状態を保った.6時間40分後にチャンバを確認したところ,液滴は融合し1個の大きな液滴になっていた.一方,画像計測技術については,今後,共焦点顕微鏡を使用して撮影した蛍光画像を用いて,軸索進展などの培養細胞の挙動を評価する必要がある.そこで細胞内のアクチンフィラメントを遺伝子組み換え技術を用いて蛍光標識して可視化し,細胞の動きとアクチン分布を評価する画像処理技術の開発を試みた.その結果,オープンソースソフトウェアであるCell-Trackに組み込み可能なプラグインを完成させることができた.
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