研究課題/領域番号 |
22650105
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
安田 隆 九州工業大学, 大学院・生命体工学研究科, 准教授 (80270883)
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キーワード | リポソーム / 膜タンパク質 / QCM / マイクロ流路 / リンパ球細胞 / 細胞刺激 / バイオセンサ |
研究概要 |
膜タンパク質である膜型IgMを有するリポソームを用いて、以下のようにしてQCM (Quartz Crystal Microbalance、水晶振動子マイクロバランス)センサを構築した。まず、大量のヒトリンパ球細胞Ramosを酪酸ナトリウムで刺激することで大量のリポソームを生成した。ヒトリンパ球細胞は細胞膜上に膜型IgMを大量に有しているため、得られたリポソームも膜表面に膜型IgMを保持していることが期待できる。次に、フィルターを用いて不要な細胞を除去してリポソームのみを回収し、超音波処理により直径1μm以下に微粒化した。一方、リポソームをQCMセンサ素子の金電極表面に固定化するために、システアミンのチオール基を金表面に結合させることで自己組織化単分子膜を形成し、この膜表面のアミノ基に細胞膜アンカー機能性分子を結合させた。そして、細胞膜アンカー分子のオレイル基とリポソーム膜を結合させることで、リポソームを金電極表面に固定化させた。このようにしてリポソームを固定化したセンサをマイクロ流路中に設置した。測定サンプルとして、膜型IgMに結合するリガンドである抗IgM抗体(IgG)を用いた。構築したセンサに対して、抗IgM抗体溶液10μg/mlと100μg/mlを作用させたところ、抗体溶液濃度に応じてQCMの周波数減少量に違いが生じることを確認した。また、抗体溶液100μg/mlを作用させたときにセンサに結合した抗IgM抗体の質量は、Sauerbrey equationより約11.2ngと算出された。以上の実験により、細胞由来リポソームをQCM電極上に固定化する技術を構築するとともに、リポソーム上に発現した膜タンパク質を利用した新規バイオセンシング技術を創出することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書の研究実施計画に記載した、リポソーム上に発現した膜タンパク質を利用した生体分子計測の基盤技術を構築することに関して、計画通りの内容を実施し、当初の目標通りの成果を得ることに成功したため。特に、リポソームをQCM電極上に固定化する技術に関しては、交付申請書で予想した通りの問題が発生したが、これを解決することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず、細胞由来リポソームを利用したQCMセンサの最適化を行うとともに、リポソーム上の膜タンパク質と結合する測定対象分子の濃度と結合量の関係を導出しセンサとしての特性を評価する。次に、遺伝子導入によりヒトリンパ球細胞の細胞膜上にGPCR(Gタンパク質共役型受容体)を発現させ、この膜タンパク質をリポソーム上に取り出し、QCMセンサを構築する。これにより、従来では不可能であったような膜タンパク質のセンサ利用が可能になる。
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