研究課題/領域番号 |
22650110
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田畑 泰彦 京都大学, 再生医科学研究所, 教授 (50211371)
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研究分担者 |
山本 雅哉 京都大学, 再生医科学研究所, 准教授 (10332735)
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キーワード | ゼラチン / ハイドロゲル微粒子 / 骨髄由来間葉系幹細胞 / 細胞集合体 / 代謝活性 / 細胞生存率 / L-乳酸産生量 / グルコース消費量 |
研究概要 |
本研究の目的は、細胞集合体を利用した細胞生物学研究を進めるための技術・方法論を開発することである。発生学、細胞生物学、およびその応用としての細胞を利用した創薬研究や再生医療のためには、細胞-細胞間相互作用をもつ細胞集合体の形成とそれを用いた研究が必要不可欠である。しかしながら、細胞集合体の内部への栄養、酸素の供給、老廃物の排泄が悪く、しばしば、細胞が死滅、機能低下し、研究の継続が難しくなることが問題となっている。この解決法として、本研究では、細胞増殖因子の徐放化ができ、しかも細胞親和性の高いハイドロゲル微粒子を細胞集合体の内部に組み込むことを行う。このことにより、細胞集合体の内部に物質透過の空間ができるとともに、細胞増殖因子の供給も可能となり、細胞の生物機能は増強される。 前年度の結果をもとに、本年度は、細胞集合体内に生体吸収性の異なるゼラチン微粒子を含ませ、微粒子の吸収性が集合体内の細胞に与える影響について検討した。細胞としては、ラット骨髄由来の未分化間葉系幹細胞を用いた。微粒子の生体吸収性に関係なく、均一に微粒子が分散された細胞集合体が形成された。微粒子を含ませることによって、微粒子のない集合体に比べて、集合体内の細胞の増殖性を有意に高まった。しかしながら、生体吸収性の高い微粒子では、低いものに比較して、微粒子が速く吸収されることから、細胞の増殖性は低くなる傾向があった。細胞の好気的代謝の指標であるL-乳酸産生量/グルコース消費量比を測定したところ、微粒子を含む細胞集合体の値は、微粒子を含まない細胞集合体に比べて、有意に低下した。その値は酸素、栄養状態のよい平面培養した場合の細胞の値と同じレベルであった。このことは、粒子を組み込むことで、細胞集合体内部の酸素と栄養状態がよくなっていることを示している。細胞外マトリクスの分泌能や骨分化能を調べたところ、微粒子を含まない細胞集合体に比べて、微粒子を含む細胞集合体では有意に高まることがわかった。
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