研究課題
細胞表面のインテグリンレセプターと相互作用可能な表面を有するナノファイバーを電界紡糸あるいは自己組織化技術を用いて調整し、モデル人工ECMの合成を行なった。特に今年度は、電界紡糸法を用いて各種ナノファイバーの作製を行い、3次元培養モデルへの展開を図った。初期的に作製したモデルは、電界紡糸から作製した不織布ナノファイバーを短繊維化処理を行い、平均直径2μm、繊維長200μm程度のマルチ分散した短繊維を作製して、これをECMのモデルとして細胞と立体的に相互作用させた。この際、繊維と細胞の状態の可視化を実現するために、あらかじめ繊維を蛍光ラベルし細胞との3D相互作用を共焦点レーザー顕微鏡で観察した。その結果、平板培養や、ゲル培養とは大きく異なる、細胞がナノ-ミクロンファイバーを立体的に握りこむ様子(細胞と人工繊維状ECMの3D相互作用)が可視化された。この技術を展開して外場からの力を加えることで細胞の3D応答が可視化できる可能性を示せた。次に、細胞の鋳型化が起こるのかを検証するために、電界紡糸ナノファイバー不織布を用いた3Dバイオリアクターシステム構築を行った。市販の還流培養装置の流路を培養液が3Dファイバー構造体の中を一方向に通過するようにし、3D足場に一定のテンションがかかるように工夫した培養器で、培養基材部にファイバー不織布をセットして角膜実質細胞を播種し、3週間の培養を行った。この結果、生着細胞は周囲のナノファイバーを引き寄せるような様子を示すSEM像が観察された。今回用いた円筒形のリアクターでは、通過する培地でナノファイバー不織布はある種風船が膨らむような力のかかり方をする。細胞のモデルファイバー引き込みは、角膜の層構造形成メカニズムを説明する証拠に成り得る。しかし、細胞が鋳型となってファイバーの配向が層によって90度回転してゆく構造の形成メカニズムは証明できておらず更なる検討を要する。
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