研究概要 |
本研究は、X線よりも線量分布が優れた陽子線治療と既存の腫瘍血管を選択的に遮断する腫瘍血流遮断剤AVE8062を機能的・相補的に併用する新規治療技術の開発を目的とする。この併用治療の狙いは、AVE8062のみでは死滅しない腫瘍辺縁部領域を陽子線で局所照射することによって予め致死的効果を与えておき、放射線抵抗性の低酸素細胞を含む腫瘍中心部の細胞に対しては、AVE8062の血流遮断効果で壊死させ、腫瘍中の全ての細胞を低線量・低薬剤作用量で死滅させる点にある。研究期間は2年間を予定し、初年度の平成22年度では、粒子線照射用のビーム形成デバイスを開発し、照射テストを経て、治療用粒子線を完成させる。そして、腫瘍を移植したマウスを用いて、試験的な治療実験を実施し、本治療法の投与線量、遮断剤作用量、併用タイミング等について治療実験プロトコルを決定する。ビーム形成デバイスの開発、照射テストは、東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンターにて実施した。具体的には、照射散乱体、ボーラス、コリメータ、エネルギーフィルター等の治療用デバイス、制御装置を開発し、水ファントムによる照射実験を行い、5mm幅の拡大ブラッグピークを利用して腫瘍辺縁部のみに局所的な高線量付与を想定した線量分布形成に成功した。この治療用ビームと線維肉腫細胞を移植したマウス腫瘍モデルを用いて本研究の治療プロトコル作成のためのテスト実験を行った。陽子線照射、AVE8062投与条件について,線量と薬剤作用量および投与タイミング等をパラメータとして実験を行い、線量および薬剤作用量に依存した腫瘍増殖遅延を確認した。その結果、併用治療条件は、陽子線線量を15~40Gy、AVE8062の投与量を20~60mg/kgの範囲にとり、陽子線照射2時間後のAVE8062投与とした。
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