研究課題
本研究は、X線よりも線量分布が優れた陽子線治療と既存の腫瘍血管を選択的に遮断する腫瘍血流遮断剤AVE8062を機能的・相補的に併用する新規治療技術の開発を目的とする。この併用治療の狙いは、AVE8062のみでは死滅しない腫瘍辺縁部領域を陽子線で局所照射することによって予め致死的効果を与えておき、放射線抵抗性の低酸素細胞を含む腫瘍中心部の細胞に対しては、AVE8062の血流遮断効果で壊死させ、腫瘍中の全ての細胞を低線量・低薬剤作用量で死滅させる点にある。マウス腫瘍モデルとしては、放射線と化学療法に抵抗性を持つNFSaマウス線維肉腫細胞を後脚大腿部に移植したC3H/Heマウスを用いた。腫瘍の直径が約8mmに達した時点で、AVE8062併用陽子線照射の単回治療実験を実施した。陽子線の線量条件は15Gy、30Gyとし、AVE8062の投与量条件は40mg/kg、60mg/kgとした。また、比較条件としてそれぞれの単独治療条件の実験も行った。AVE8062の投与は、陽子線照射後1時間後の腹腔投与とした。治療後の腫瘍体積を経日的に測定した結果、陽子線線量およびAVE8062投与量依存的に腫瘍の増殖遅延効果が確認された。単回治療後の腫瘍の糖代謝および治療抵抗性を持つ低酸素細胞の腫瘍内の残存状況を評価するために、1mm以下の高分解能を持つ小動物用半導体PET装置を用いた[^<18>F]FDGおよび[^<18>F]FMISOのPETスキャンを実施した。その結果、併用条件で単回治療された腫瘍の中心部は、[^<18>F]FDGおよび[^<18>F]FMISOともに集積がほとんどなく、低酸素細胞を含めて広範囲に腫瘍細胞を殺傷されたと考えられた。一方、腫瘍細胞の辺縁部に、わずかに[^<18>F]FDGおよび[^<18>F]FMISOの集積が確認され、単回治療では腫瘍細胞の一部の生存が認められたが、再度併用治療を行うことで、本研究の治療法で難治性であるNFSa腫瘍を消失させる可能性を得ることができた。
すべて 2011
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International Journal of PIXE
巻: Vol.21,Nos.3 & 4 ページ: 125-131
10.1142/S0129083511002240