平成23年度の研究の目的は、二次元映像に奥行知覚を与える新しい体腔内照明デバイスによる内視鏡外科手術の有用性を動物実験で検証することであった。そのために、体腔内に挿入できる新しい腹腔鏡手術照明デバイスを開発することと、そのデバイスを用いた腹腔鏡手術システムで動物実験を行うことを計画し、以下の研究成果を得た。 まず、照明デバイスは、約3cmの小切開孔から挿入できて、容易に腹壁に設置固定できるプロトタイプの開発に成功した。本プロトタイプは、腹腔内全体をあたかも無影灯のように照明できるようなデザインで製作されており、開腹手術と同様の照明環境を体腔内にも実現した。本照明デバイスの開発に成功したことで、奥行き感の乏しい腹腔鏡手術映像に、平面画像でありながら、陰影の手がかりのある腹腔鏡手術映像を提供できる照明システムが、生体でも利用できるようになった。 そして、消化器外科、肝臓外科、泌尿器科、産婦人科医師、総計19名が、新しい腹腔鏡手術照明システムで、それぞれの専門分野の腹腔鏡手術をブタで行い、アンケート形式で主観的評価を行った。その結果、13名(68%)の医師が、実際に手術をしてみて、新しい照明システムの方が従来の照明システムに比べて、明るい、立体感があるといった理由から、手術がやりやすくなったと評価した。 平成23年度の研究で、生体での腹腔鏡手術が施行できる照明システムが開発されたことは、今後の研究の発展に非常に意義がある。平成23年度の研究の結果、照明デバイスに必要な改良点も明らかとなった。これを踏まえ、照明デバイスの改良により、安全で質の高い、よりよい腹腔鏡手術照明システムへと発展し、臨床応用が可能となることが期待される。
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