本年度は、早期乳癌発見のための自己検査ツールとして、皮膚微量ガス簡易測定法の開発を行った。具体的には健常者からの乳房付近からのガスを種々の吸着ポリマーにて捕捉し、GC-MASSにてガスの分析を行った。 数種類のポリマーを吸着剤として検討した結果、ポリジメチルシロキサン(PDMS)のガス捕捉能が高いことが示された。しかしながら、PDMSは前処理を適正に行わないと種々のアーティファクトが観察される傾向であったため、前処理条件の検討も併せて行った。 アセトン、アセトニトリル、エタノールなどの通常の有機溶媒での超音波洗浄は有効であったが、最後に、純水での超音波洗浄、200℃以上での真空乾燥(真空ベルジャー内)によって、ほぼアーティファクトの影響を抑えることが可能となった。吸着するポリマーのサイズとしてはGC-MASSの分析の条件からあるサイズまでに限られているため。ポリマーの表面処理によって、更なる感度の向上は期待できる。 年代、性別の異なる健常者10名のデーターを分析した芳香族アミン、脂肪酸などのガスを同定することができたが、予定していた患者からのサンプリングは制約が多くまだ達成されていない。次年度には乳癌患者のガス分析が可能になる予定であり、特異的ガスを同定できると考えている。一般に乳癌は片側だけに発症するため、個人の左右の乳房付近からサンプリングすることによって、より精度の高い診断も可能となることが期待される。
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