1) ペプチド修飾リポソームの調製 AG73ペプチドをPEGの末端に結合させたペプチド修飾リポソームを調製した。脂質には、負電荷脂質DOPGとDOPEを用い、また、蛍光標識には、DiIを使用した。蛍光標識された種々のリポソームを骨髄幹細胞に添加し、その細胞相互作用を蛍光顕微鏡にて調べた。その結果、AG73ペプチド修飾リポソームでは、比較的強い細胞相互作用が認められたのに対し、スクランブルペプチド(AG73T)を修飾したリポソームやペプチド未修飾リポソームの場合においては、ほとんど相互作用は認められなかった。このことから、AG73ペプチド修飾リポソームの骨髄幹細胞への遺伝子キャリアーとしての可能性が示唆された。 2) 骨髄幹細胞におけるシンデカンの発現解析 ラミニン由来ペプチドAG73のレセプターとして考えられているシンデカン2が、骨髄幹細胞に発現しているかを確認するために抗シンデカン2抗体を用いて、フローサイトメトリー(FACS)により解析した。その結果、中程度のシンデカン2発現が認められた。このことから、AG73ペプチド修飾リポソームは、シンデカン2を介して骨髄幹細胞と相互作用することが示された。 3) 遺伝子導入効果のin vitro評価 上記の結果を踏まえて、AG73ペプチド修飾リポソームにpoly-L-1ysineを用いてレポーター遺伝子をコードした発現プラスミド(レポーター遺伝子(EGFPまたは、ルシフェラーゼ)の内封を行い、これを用いて遺伝子導入を試みた。その結果、細胞内への取り込みは、確認できたものの有意な遺伝子発現の増強は認められなかった。このことは、細胞内に取り込まれたリポソームのエンドソームから、脱出に問題があると考えられる。今後は、導入リポソームのエンドソームからの脱出を促進させる工夫(超音波併用や脂質等の変更)を進める必要があると考えられる。
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