バブルリポソームと超音波照射併用によるAG73修飾リポソームのエンドソーム脱出の促進効果に加え、さらに内封遺伝子の細胞質内送達後の核移行性を向上させることで、本導入法のさらなる向上が可能か否かについて検討した。 方法として、レポーター遺伝子のプラスミドDNA(pDNA)と核移行シグナル(NLS)ペプチドを混合したものに、polyethylenimine(PEI)を加え、NLS complex(N/P比を1-2とした)とし、AG73修飾PEGリポソームに内封した。その粒子径は、およそ150 nm付近であった。293T-Syndecan2細胞(Syndecan2高発現細胞)にNLS complex内封AG73修飾PEGリポソームを添加し、4時間培養した。その後、バブルリポソームと超音波照射を併用し、24時間後のルシフェラーゼ活性を指標に遺伝子導入効率を評価した。結果として、NLSを含まないcomplexを内封したAG73修飾PEGリポソームに比べ、NLS complex内封AG73修飾PEGリポソームでは高いルシフェラーゼ活性が認められた。さらに、NLS complex内封AG73修飾PEGリポソームにバブルリポソームと超音波照射を併用することで、さらなるルシフェラーゼ活性の上昇が認められた。 以上の検討から、NLS complex内封AG73修飾PEGリポソームによる遺伝子導入法において、NLSがpDNAの細胞内挙動に影響を与えることで、核への遺伝子送達効率が高まり、その結果として遺伝子発現が促進できることが明らかとなった。
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