本研究の目的は、簡易心肺持久力(cardio respiratory fitness: CRF)測定法を考案し、下肢筋量等との関係も踏まえ、糖尿病等中・高年齢有疾病者のCRF基準値構築に結びつけることである。本年度は,第2段階として、1)シャトルウォーキングテスト(shuttle walking test; SWT)、2)歩行能力の低下した者でも実施可能な椅子立ち上がりテスト(sit to stand test: STS)、における呼吸生理学的特性、全身および下肢の自覚的疲労感(rating of perceived exertion: RPE)、無酸素性作業閾値(anaerobic threshold: AT)判定性から、簡易評価法としての適正を検討した。 SWTは、9m間隔の2本のコーンの間を往復するが、今回は有疾病者者向け歩行速度として、コーン間隔を7mとした変法(8mSWT)でも測定した。STSは、座面の高さ、立ち上がり頻度の漸増による負荷強度調整の長・短所から、中・高年有疾病者の膝関節へ過負荷を避けるため、立ち上がり頻度漸増法を採用した。 SWTでは、歩行距離、AT及び10mSWTと8mSWT終了時の酸素摂取量等を健常成人及び糖尿病患者で測定した。STSでは、健常成人を対象に、立ち上がり回数、AT及び自転車エルゴメーターで求めたATとの差を検討した。同一対象に対する測定は1~2週間の間隔を空けて行った。その結果、10mSWTと8mSWT終了時の歩行距離、RPEに差は無かったが、8mSWTの方がAT判定が容易な傾向を示した。STSではAT判定が全例可能であったが、自転車エルゴメーターによるATより有意に低い値となった。SWS、STSは共に簡易CRF測定法として有用であるが、評価終了時の運動強度の低さ、AT判定率からSTSの方が望ましい可能性が示唆された。
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