研究概要 |
骨形成因子(bone morphogenetic protein, BMP)の移植による実験的異所性骨化のこれまでの検討では、新生骨形成に至るまでにBMP移植部位周辺にマクロファージやリンパ球など強い炎症細胞と筋細胞の脱分化が現れることがわかっていた。BMP移植早期の炎症反応が異所性骨化に大きく影響をおよぼしている可能性が示唆されたため、炎症性物質の発現と未分化間葉系細胞の存在を抗体を用いた免疫染色で調べた。 1)BMPを5mgずつゼラチン・カプセルに詰め、ddYマウスの大腿ハムストリングスの筋膜下に移植した。 2)BMP移植後、3,5,7,10,14日目に移植部周辺の軟部組織をサンプリングし、ホルマリン固定した。 3)それぞれヘマトキシリン・エオジンおよびトルイジンブルー染色ならびに、抗MyoD1抗体染色、抗IL-1β抗体染色、 抗IL-6抗体染色、抗TNF-α抗体による免疫染色を行い検討した。 4)結果は移植3日目、5日目では、BMP周辺にマクロファージ、リンパ球、未分化間葉系細胞が集蔟し、明らかな炎症反応が見られた。また、局所において、IL-1β、IL-6、TNF-αのいずれも発現していた。抗MyoD1抗体染色により、炎症局所周囲の筋細胞の脱分化が観察された。移植7日目では、炎症反応が持続しており、IL-1β、IL-6、TNF-αのいずれも発現していた。また、筋細胞の核が中心化している様子も見られ、3日目、5日目と同様、筋細胞が脱分化していた。BMP移植後10日目では炎症反応は収束し軟骨形成が見られ、組織内にIL-6, TNF-αが発現していた。BMP移植後14日目では、成熟した軟骨形成が見られた。また、軟骨内にIL-6, TNF-αの発現が見られた。 異所性骨化の初期過程において炎症性物質の明らかな発現が観察され、それらが異所性骨化に影響を与えている可能性が示唆された。
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