研究概要 |
筋は、一般的に教科書に載っている起始や停止以外に、隣接した筋にも付着し連結している。我々はこの連結が、大殿筋と大腿四頭筋(外側広筋)のような異なる関節運動を行う2筋間にも存在することを、ヒトの肉眼解剖学的研究で明らかにした。また、この連結が、互いの筋に運動学的影響を及ぼす可能性があることを健常人に対する超音波画像診断装置(エコー)による研究で明らかにした。しかしヒトによる研究では、この連結が運動力学的にどのくらいの影響を持つのか、筋骨格系の病態にどのくらい関与するのかを定量的に明らかにするのは難しい。そこで、本研究では実験動物を使って、この連結が接続する筋間に及ぼす影響を運動力学的に解析することである。 そこで、平成23年度の実体顕微鏡下における実験において明らかになった、ラット前肢の肘関節付近の直列型の連結部(上腕三頭筋と尺側手根屈筋)を対象に、構造学的に定量化して評価するとともに、力学的にどのような影響があるかを、定量的に評価した。先ず、灌流固定後に皮膚を剥離したラットの、上腕三頭筋の筋腹に針を取り付け起始方向に牽引し、連結している尺側手根屈筋の移動を観察した。そこで、麻酔下のラットの尺側手根屈筋停止腱を張力計に接続し、橈骨神経に電気刺激(train duration;650 ms, duration;1 ms, interval;20 ms, frequency;37.5 Hz)を与えた。そして、上腕三頭筋が収縮したときの尺側手根屈筋の停止腱に加わる張力を測定した。その後、筋連結部を離断し、同様に張力を測定した 。上腕三頭筋の収縮によって尺側手根屈筋に張力が加わった。連結部を離断すると、尺側手根屈筋に加わる張力は大きく減少した。よって、ラットの筋連結はヒトの筋連結と同様の力学的影響をもち、組織学的、生化学的検証が可能であると考える。
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