研究概要 |
今年度は、ラット膝関節に起炎剤を投与することによって変形性膝関節症モデルを作製するとともに、大腿四頭筋への電気刺激による筋収縮運動が患部ならびに遠隔部の痛覚閾値におよぼす影響を検討した。予備実験も含めて50匹のラットを実験に供し、現段階では15匹のラットが妥当なモデルとして使用可能であった。実験デザインとしては、(1)3%Carrageenan-Kaolin混合液300μLを膝関節に注入することで関節炎を惹起させた後、8週間通常飼育とする群(関節炎群)、(2)同様に関節炎を惹起させた後、4週間通常飼育を行い、4週後より電気刺激を行う群(電気刺激群)、(3)生理食塩水300μLを膝関節に注入することで関節炎惹起の疑似処置を行い、その後8週間通常飼育を行う群(Sham群)を設定した。電気刺激の方法は大腿四頭筋に表面電極を貼付し、周波数50Hz、パルス幅250psecの条件で、4,0mAの刺激強度で20分間通電した。なお、その頻度は隔日とし、延べ4週間実施した。そして、実験期間中は膝関節の横径を測定することで腫脹の程度を評価し、併せてプッシュプル・ゲージを用い膝関節の圧痛閾値を測定した。また、遠隔部である足底部の痛覚閾値はvon Frey filament (VFF)を用いて評価した。結果、起炎剤投与1日後より膝関節の腫脹と圧痛閾値の低下を認め、これは2週間持続した。一方、遠隔部である足部の痛覚閾値も起炎剤投与1日後より低下を認め、これは8週間の実験期間すべてにおいて低下が認められた。次に、電気刺激の効果は患部には認められなかったが、遠隔部に対しては痛覚閾値の低下が軽減していた。つまり、関節炎の発生に伴う二次痛覚過敏に対して筋収縮運動が有効である可能性が示唆され、今後はそのメカニズムを解明する予定である。
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