研究概要 |
上肢麻痺者の手指機能再建を目的とする機能的電気刺激を用いたさまざまなアプローチがなされている。しかし,比較的手軽に行える皮膚表面からの機能的電気刺激には(1)前腕部・手掌部に多数の筋があり選択的制御が困難であること,(2)皮膚表面刺激を行う時は,骨・骨間膜・筋などの体内組織が刺激信号にどのような影響を与えるかはっきりしない,などの課題がある。これまでの検討で,アレイ電極を用いることで長母指屈筋・伸筋の選択的刺激に成功している。本年度はまず,選択的刺激が可能な筋数を増やすことを目的に,日常的に必要な動作として「Power grasp」「Pinch」「Lateral pinch」「Key grip」の4種類の動作について実験を行った。2.5×2.5cmのマス目で区分した前腕に2×2cmの小電極を配置し,基準電極として4.5×7cmの大電極を掌側面肘付近に配置した。刺激信号はPCからの電圧信号を自作の定電流刺激回路に通し与える。実現できた動作は「Power grasp」と「pinch」である。「pinch」は示指-母指ではなく,中指-母指ではあったがつまみ動作としての機能は果たせると考えられる。実現できなかった「Lateral pinch」と「Key grip」だが母指のみのIP関節の屈曲動作を得られたので第2~5指の屈曲を上手く組み合わせることができれば今後期待できる。「Lateral pinch」に関しては似たような動作も得られなかった。また,体内組織が体内電流分布にどのような影響を与えるかモデルを用いて簡易的な考察した。その結果,骨や筋に沿うような電界ベクトルが確認でき,また,電極付近のより遠位側ではベクトルの乱れも見て取れた。
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