研究概要 |
本研究は,電気刺激による患者本人の筋による発生力と,小型軽量機構・小型電気モーターによる機械的な補助を複合的に利用することにより,位置精度ならびに発生力,重量などの点で実用レベルの麻痺手の動作補助デバイスの実現を目指すものである。ここで用いる電気刺激法は,代表者らによりその可能性が示された干渉電流による手法である。本研究では,最終目標デバイス実現のための,干渉電流による電気刺激法の確立に必要な知見を得ることが目的であり,前腕部にある指ならびに手首の運動を支配する筋を,十分な空間分解能をもって電気刺激する干渉電流法を確立する。実験を進めるうち,マルチチャネルによる経皮的電気刺激を行っている最中に,刺激信号振幅と手指動作のある非単調な関係を得た。前腕に対する2ch電気刺激実験において,あるチャネルを一定振幅で出力しながら他チャネルの振幅を増大させていくと,一度刺激感覚が消失,または軽減し,再度刺激感覚を得るという現象である。この現象は刺激感覚だけでなく,刺激信号振幅と手掌部の動作との間にも非単調な応答が見られた。この非単調な現象は,選択的刺激においては障害になると考えられた。そこで,この問題を解決するため,上述の現象が生じる刺激条件と,生じない刺激条件の比較を行い,さらに有限要素法を用いた簡易モデルにおける生体の刺激時の体内様相について検討した。その結果,(1)同極性の信号波形を用いること,(2)複数チャネルの刺激タイミングが同じであることが,このような非単調現象を生じさせる原因となっていることが示唆された。さらに,この現象をシミュレーションにより説明することを試みた。その結果,伝導率などの物性値の違いによる刺激効果や周波数による刺激深度の変化,骨の体内電位分布に与える影響など,非単調現象発生のメカニズムの一部を説明できる可能性が示唆された。
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