研究概要 |
本年度は画像処理による閉眼時瞬目の検出方法を確立した.また,閉眼時瞬目の基礎特性を把握するための聴覚課題を用いた実験を計画・実施し,新たな知見を得た.得られた成果は以下の通りである. (1)閉眼時瞬目の検出:昨年度に提案した,まつ毛領域の輪郭をフレーム間で照合する検出方式は,検出精度と処理時間に問題のあることが判明した.そこで,上眼瞼とまつ毛領域の境界線の動きをフレーム間で検出する方法を考案した.本手法では,まず,上眼瞼とまつげ領域の境界部分を両領域における濃度分布の特徴を利用し,上眼瞼境界点列として生成する.次に,得られた上眼瞼境界点列に対して4次の多項式を最小二乗近似で当てはめ,上眼瞼境界線を得る.この上眼瞼境界線のフレーム間における動き量を求めることにより閉眼時瞬目を抽出する.12名の実験協力者に対して本手法を適用した結果,上眼瞼の微小な動きが良好に抽出できていることが確認された.上眼瞼の移動パターンを調べたところ,閉眼時瞬目は通常の瞬目のように上眼瞼が鉛直方向に単純に下降するのではなく,目頭斜め方向に,水平移動成分を伴い下降することが分かった. (2)基礎特性の把握:閉眼時瞬目の基礎特性を把握するため,開眼安静条件,閉眼安静条件,開眼聴覚課題条件,閉眼聴覚課題条件の,都合4条件下で瞬目を採取した.聴覚課題は,一定の時間間隔で短時間提示される二種類の音刺激を弁別する課題であった.実験協力者は,呈示された音刺激の種類に応じて,指定されたマウスボタンを押下した.分析の結果,閉眼時瞬目も通常の瞬目と同様に,聴覚刺激呈示後のある特定の時点で集中して生じる傾向が確認された.この結果は,閉眼時瞬目も人の認知過程を反映する指標であることを示す.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画当初は,瞬目計測の標準的な手法として筋電図法を利用する予定であったが,研究の過程で本手法の適用が困難であることが判明した.そこで,代替案として,最終年度に開発を予定していた画像処理による検出手法を前倒しで開発することにした.そのため,研究目的(1)「基礎特性の解明」についての実験計画・実施がやや遅れる状況となっている.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度で閉眼時瞬目の計測方法は確立できた.次年度は,主として,研究目的(1)「基礎特性の解明」を達成するための実験の実施と分析に注力する.時間的な制約から,研究目的(3)「入眠推定法の提案」の達成については努力目標に留め,目的の達成に必要とされる基礎的な知見の集積に努める.
|