研究課題
本年度は,閉眼時の眼瞼運動から閉眼時瞬目のみを切り出す方法を考案し,主として閉眼時瞬目の基礎特性を明らかにした.得られた成果は以下の通りである.(1)閉眼時瞬目の選出方法の考案:閉眼時の眼瞼運動は鉛直方向に単純に上下動するのではなく目頭斜め方向に移動することから,隣接フレーム間における上眼瞼の移動方向と大きさをベクトルで記述する方法を導入した.次に数十フレーム間(約300~400msに相当)を1区間として,区間内のベクトルの動きパターンに着目し,通常の瞬目と類似の動きパターンを呈している区間を閉眼時瞬目生起区間として選出する方法を考案した.これにより,閉眼時の眼瞼運動のうち,閉眼時瞬目のみを対象にした分析を適用することが可能となった.(2)基礎特性の解明1(認知過程との関係):高音と低音の純音刺激を弁別する課題を用いて,安静条件下と聴覚課題条件下の基礎特性を比較した.得られた知見は次の3点である.第1に,聴覚課題条件下の閉眼時瞬目の生起頻度は安静条件下よりも高い.第2に,聴覚課題条件下では刺激呈示直後の特定の時点で閉眼時瞬目が集中する.その時点は通常の瞬目(開眼時の瞬目)よりも早い.第3に,通常の瞬目は弁別結果を回答するためのマウスボタン押下の直後に生じるが,閉眼時瞬目はボタン押下の直前に生じるとの違いがある.この現象は,閉眼時瞬目がマウスボタン押下という運動反応要因を反映せず,聴覚刺激に対して為された情報処理の終了などの認知的要因を反映することを示唆する.(3)基礎特性の解明2(睡眠との関係):予備的検討として,3名の実験協力者について,1時間程度の仮眠をとっているときの閉眼時眼瞼運動を記録した.5分間隔で閉眼時瞬目の生起頻度を算出したところ,時間経過により生起頻度が変動する傾向が認められた.これより,覚醒水準の高低が閉眼時瞬目の生起頻度に影響を及ぼすことが示唆される.
24年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2012 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
人間工学
巻: Vol.48, No.2 ページ: 86-90