I. 本年度は、ラットの延髄縫線核の各部位をカイニン酸を用いて傷害し、呼吸運動に対する影響を詳細に調べた。 ①8週齢ラットをペントバルビタール麻酔下で麻酔し、心電図、横隔膜筋電図を記録しながら、延髄正中部に0.1%カイニン酸を満たしたハミルトンシリンジを挿入して、カイニン酸を微量注入した。2μLの注入量で、横隔膜筋電図活動は一時的に消失したが、すぐに回復し、注入後25分で無呼吸に至り、その後は回復しなかった。1μL~0.06μLに注入量を減らして呼吸に対する影響を調べた結果、obexの前方1~3mmへの0.1μL の注入により、無呼吸が一時的に出現したが、その後回復し、0.1μLの追加注入により横隔膜筋電図活動は完全に消失して、無呼吸が続き、回復しなかった。 ②幼若ラット(2及び3週齢)をペントバルビタール麻酔下で麻酔し、延髄縫線核に0.1%カイニン酸を満たしたハミルトンシリンジを挿入して、カイニン酸を微量注入した。 注入量は①を参考にした。2週齢ラットは延髄縫線核の手術による侵襲によりほとんど死亡し、データが得られなかった。3週齢ラットについては0.02μLの注入により呼吸頻度は50%減少した。0.05μLの注入により無呼吸が一時的に出現したが、不規則な呼吸が続いた。 II.3週齢ラットをペントバルビタール麻酔下で麻酔し、後頭部の皮膚を切開してラムダ縫合を指標にして正中部に微小の穴を開け0.1%カイニン酸を満たしたハミルトンシリンジを挿入して、②を参考にしてカイニン酸を微量注入し、切開部を縫合して飼育ケージに戻した。1週間後の呼吸運動は正常であった。 III.今回の結果から、2週齢ラットは、延髄縫線核の外科的手術による侵襲は呼吸運動出力に大きな損傷を受けるが、3週齢ラットについては影響を被らないことが示唆された
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