研究概要 |
塩酸ブピバカインを成熟ラット左ヒラメ筋に注入し、薬理的筋損傷を誘発した。その後、1,3,5日目に、ネンブター注入による麻酔下のラット後肢を42℃の温水に30分浸した。筋損傷なしの正常ラットにも、同じような処置を加えた。7日目に麻酔下のラットから左右のヒラメ筋を採取した。数匹のラットでは、心臓よりクレブスリンゲル液を注入し、血液を除去する処置も行った後で、筋を採取した。これらの筋を横方向に2分し、抹消部はOCT compoundを使用し、コルク上に立てて凍結保存し、横断切片を作成した。これらのサンプルでは、筋線維再生のチェックやheat shock protein (HSP)72等の各種染色を行った。その結果、温熱刺激は筋再生を助長することが明らかとなった。温熱刺激を加えた再生筋線維の周囲には、HSP72を発現する細胞も確認された。このような細胞は、正常筋や血液除去再生筋には認められず、毛細管内に分布する白血球(好中球と思われる)および骨髄細胞に発現していることが分かった。筋線維内における発現は認められなかった。従って、HSP72そのものが、筋再生を直接誘導しているものではないことがわかる。しかし、再生は助長している訳で、HSP72が間接的に重要な仲介役を演じているのは明らかである。そこで、温熱刺激による筋再生機構の詳細に迫るために、残りの筋サンプルで、遺伝子およびタンパク質発現の網羅的分析に着手し始めた。
|