研究課題
平成23年度は、救急隊群(高負荷群)と非交替勤務群(対照群)のデータ(日常生活下でその都度記録を行うecological momentary assessment(EMA)法と、一日の終わりに一日の行動の流れに沿って症状を想起するdayreconstructionmethod(DRM)法による自覚症状の記録と、アクチグラフによる身体活動の記録)の解析を行った。(1)EMAとDRMで記録された自覚症状は両群で有意な関連を認めたが、平均や個人内変動の大きさがEMAとDRMで異なる項目があり、症状が正確に想起されない可能性が示唆された。また、救急隊群で、出場時の疲労感は非出場時に比べより強く想起されることを示唆する結果が得られた。(2)身体活動度の自己評価とアクチグラフによる平均身体活動度は、EMAでは両群ともに有意な関連を認めたが、DRMでは対照群では有意だが、救急隊群では有意な関連を認めなかった。救急隊は当番日に24時間以上の勤務を終えてからDRMを記録するため、DRMの時点で身体活動度を想起できなくなっていた可能性が考えられた。(3)自覚症状評価の妥当性の検討としてアクチグラフで測定した身体活動度の平均値・標準偏差を外的基準とし各症状評価との関連を解析したところ、救急隊群のEMAによる疲労と身体活動度の標準偏差(正)、対照群のEMAによる疲労と身体活動度の平均(正)、EMAによる抑うつと身体活動度(負)に有意な関連が見られたが、群間で一貫しなかった。一方でDRMにより評価した症状の一部も身体活動度と関連が見られた。以上の結果から、自覚症状や身体活動度はその日の夜においても正確に思い出せずバイアスが存在する可能性があり当初想定していた脆弱性を指示する結果が得られた。自覚症状の評価法の妥当性の検討については外的基準として用いる指標をさらに検討して行う必要があると考えられた。
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