本研究課題ではToll Like Receptorを豊富に発現する腸管平滑筋の萎縮あるいは機能低下が骨格筋損傷からの回復不全に関与するという仮説を検証し、そのメカニズムを明らかにすることを目的とした。平滑筋機能の維持には腸内細菌が重要である。腸内細菌除去により遠隔臓器である骨格筋の損傷からの回復過程に関与することを明らかにする挑戦的な課題である。外科手術後に早期に経口摂取を開始した方が、回復が早いといわれるが、そのメカニズムを明らかにすることにつながる研究課題である。 われわれは抗生物質/抗菌剤による腸内細菌除去は、薬剤誘発性筋損傷の回復を遅延させることを、先行研究において明らかにしていたが、薬剤誘発性筋損傷には損傷範囲のばらつきがあるため、あらたにギブス固定による廃用性筋萎縮を作成し、ギブス固定解除後の筋損傷およびその回復過程を観察した結果、腸内細菌除去は廃用性萎縮からの回復も著しく遅延させることを明らかにした。 腸内細菌除去マウスにおけるLPSの投与は筋損傷からの回復を促進したことから、腸内細菌除去マウスにProteoglycan(PG)あるいはPG豊富なLactobacilli2種の経口投与を行った。しかしPG、Lactobacilliいずれにも筋損傷からの回復促進効果は確認されず、TLR2の関与は否定的であった。高齢化マウスを用いた同様の実験を予定していたが、震災の影響により高齢化マウスが失われ、37週令のマウスにおける実験しか実施できなかった。またクロドロネートによるマクロファージ除去後の筋損傷からの回復過程にはばらつきがみられ、マクロファージの関与が骨格筋の回復に必須であるか否かについて結論を得ることはできなかった。
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