我が国において小児期の肥満と成人期の体型や生活習慣病との関連を同一個人で検討した報告は極めて少ない。本研究では過去(1975~)に医療機関を受診した肥満小児の診療記録をもとに予後調査(後ろ向きコホート調査)を実施し、小児期からの肥満継続・解消の要因や成人期の生活習慣病との関わりを検討することを目的とした。平成22年度は肥満小児における診療情報データベースの構築、調査紙作成・郵送・回収を主課題とし、現段階で908名の情報を収集した。診療情報による測定当時の年齢は10.4±2.8歳、身長141.4±14.8cm、体重54.0±18.2kg、肥満度53.2±20.5%であった。血液生化学はGOT(AST)22.2±15.5IU/L、GPT(ALT)25.1±29.9IU/L、尿酸5.0±1.5mg/dl、総コレステロール183.6±35.5mg/dl、中性脂肪139.8±90.9mg/dl、HDL-C 47.7±11.4mg/dlであった。出生時体重は3245.7±475.3g、太り始めは5.2±3.0歳であった。当時の測定日から現在(H23年3月)までは平均23.7±3.9年経過しており、現在の年齢は34.1±4.9歳であった。これら908名の住所データベースを構築し、簡易型自記式食事歴質問票(BDHQ)、健康関連QOL尺度(SF-36)ならびに診察希望の有無について尋ねる調査紙を送付した。現在、調査紙を回収中であり、回収終了とともに現在の肥満度、栄養摂取の状況、QOLの状態を把握する。その後、小児期から肥満を継続した群、解消した群に分類し、栄養摂取状況、QOLの状況を比較する。また、診察希望者に来院してもらい現在の腹部脂肪分布や生活習慣病の状況などを詳細に把握する。
|