研究課題/領域番号 |
22650166
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
家光 素行 立命館大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (90375460)
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研究分担者 |
村上 晴香 国立健康・栄養研究所, 健康増進研究部, 特別研究員 (20344880)
宮地 元彦 国立健康・栄養研究所, 健康増進研究部, 部長 (60229870)
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キーワード | 動脈硬化 / 遺伝子多型 / テーラーメイド運動療法 / 生活習慣病 |
研究概要 |
国内では虚血性心疾患、脳血管疾患などの動脈硬化を起因とする死亡原因が30%近く占めているため、いかにして、動脈硬化性疾患やそのリスクを軽減させるための生活習慣の改善を促せるかが重要な課題である。しかし、運動効果には、個人差があることから、動脈硬化に対する運動指導には個人対応型のテーラーメイド運動指導が必要であると考えられる。本研究では、運動により改善される動脈硬化指標の個人差に影響を及ぼす内皮細胞由来の血管拡張・収縮調整性因子の遺伝子多型を探索することを目的とした。被験者は、喫煙習慣はなく、慢性的な疾患を有しない者とし、20~70歳までの男女843名(男244名、女599名)を対象とし、FABP2Ala54Thr遺伝子多型をTaqman法にて判定し、動脈スティフネスの指標として頸動脈β-stiffnessおよび血圧を測定した。体力レベルは最大酸素摂取量を測定し、各年代・性別ごとの最大酸素摂取量の中央値を基準に体力の高い群(High-Fit群)と体力の低い群(Low-Fit群)に分けた。FABP2Ala54Thr遺伝子型の頻度はAla/Anaが41%であった。High-Fit群の体重、体脂肪率、トリグリセライド、血糖は、Low-Fit群と比較して有意に低値を示し、HDLコレステロールおよび最大酸素摂取量は、Low-Fit群と比較してHigh-Fit群で有意に高値を示した。FABP2 Ala54Thrの遺伝子多型間においては、頸動脈β-stiffness、収縮期血圧、拡張期血圧、血中脂質および血糖値、体脂肪率に有意な差が認められなかったが、Low.Fit群において、FABP2 Ala54ThrのThr-Thr型と比較して、Ana/Ala型の頸動脈β-stiffness、収縮期血圧、拡張期血圧は有意に高値を示した(p<0.05)。一方、High-Fit群の頸動脈β-stiffness、収縮期血圧、拡張期血圧は、多型間で有意な差が認められなかった。本研究の結果から、運動習慣のない者はFABP2 Ala54Thr遺伝子多型による動脈硬化リスクの多様性に影響するため、継続的な運動の実施を指導する必要性がある可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子多型により動脈硬化リスクの個人差を診断し、運動プログラムを提示するという目的に対して、今回の研究により、FABP2遺伝子のAla54Thrは考慮すべき遺伝子多型の1つである可能性が示された。
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今後の研究の推進方策 |
本研究結果からは、また1つの多型による影響でしか検討されていないが、今後、遺伝子多型の解析の数を増やすことによって、多くの遺伝的な要因を解明することができると考えられる。
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