研究概要 |
昨年度に開発した吸収シート法により運動中の身体多部位の発汗量を測定することが可能になった.本年度は,(1)我々の発汗データを再分析し,その結果に基づき吸収シートで測定した局所総発汗量からその経時変化を推定する方法を確立し,さらに,(2)若年成人を対象とした40分間60%VO_2max自転車運動時のデータから身体21部位の発汗量の経時変化を推定した.(1)では3つの先行研究【(a)若年成人男女と高齢男女の下肢温浴実験,(b)思春期前男児,若年と高齢男性の一定強度での運動実験,(c)運動鍛錬者と非鍛錬者男女の漸増負荷での運動実験】でのデータから,老若男女を問わず分時発汗量には様々な組み合わせの部位差が存在したが,累積発汗量に対する分時発汗量の比率(発汗比率)で表示すると,その部位差は小さくなり,全身ほぼ同一の経時変化が得られることが明らかにされた.さらに,身体部位差の程度を発汗量と発汗比率を用いて算出した変動係数で比較すると,発汗比率の変動係数が発汗量の変動係数より有意に小さかった.以上の結果,吸収シート法で測定した身体多部位の局所総発汗量は,カプセル換気法で測定したどの部位の発汗比率の経時変化を用いても,その経時変化を推定できると考えられる. (2)実験の局所総発汗量データから,1)躯幹は四肢より多い,2)躯幹,四肢とも左右差はない,3)躯幹においては中央が左・右より多い,4)脇腹部は躯幹前・後面より少ない,5)上肢は下肢より多い,6)下肢では前面が後面より多い,ことが観察された.その間カプセル換気法で背部発汗量を測定し,それに基づき求めた発汗比率をシート法で測定した局所総発汗量に乗じて,身体21部位の発汗量の経時変化を推定した.さらに,平均体温の上昇度-局所発汗量の対応関係を部位毎に推定し,温熱的機能性を考慮した衣服を設計する際に,有益な一助となると推定方法を提示した.
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