研究概要 |
【目的】母親の栄養摂取が不十分で胎児の栄養不良のときに、子宮内発育不全がみられ、成人期に栄養代謝障害および生活習慣病の発症につながるといわれている。しかし、近年は母親が肥満や糖尿病のときにも胎児に影響を及ぼすことが明らかになってきている。そこで、母親の栄養摂取過剰および栄養不足のときの胎児への影響について検討した。 【方法】10週令のメスSDラットを高エネルギー食(4.81kqal/g)群(HC群)、通常エネルギー食(3.95kcal/g)群(Cont群)、エネルギー制限食(1,98kcal/g)群(CR群)に分け、21日目に出産した。出生後は通常食を自由に食べさせて授乳させた。離乳前の3週で仔ラットを解析した。【結果・考察】体重および内臓脂肪はCR群で他群より低値を示した、CR群が、血糖値およびコレステロール濃度は高値を示し、中性脂肪およびレプチンは低値を示した。肝臓のメチル化DNAの平均値は、HC群、Cont群、CR群で、それぞれ3,26±0.79、3.23±0.78、3.31±0.86で、3群間で差はなかった。そこで、メチル化レベルのピーク値を基準に低、中、高、超高に分けて検討した。その結果、HC群は低メチル化遺伝子が4%多かった。このことは高脂肪食では肝臓の遺伝子発現は増加していると考えられた。さらにCR群では超高メチル化遺伝子が25%増加していた。このことはエネルギー制限によって肝臓の遺伝子発現が低下していると考えられた。したがって、胎児の遺伝子発現に母親の栄養摂取が過剰であっても、また欠乏しても影響を与えることが明らかになった。
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