食習慣・食行動が生活習慣病発症に及ぼす影響を科学的に明らかにすることは、食育を効果的に実践する上で必要な理論構築と新たな教育手法の開発に必須である。しかしながらこのような影響は個人差に左右されることから、従来の方法では評価が困難である。本研究では、疾患感受性遺伝子の同定に用いられる遺伝統計学的手法であるゲノムワイド関連解析を食行動感受性遺伝子の同定に応用し、生活習慣病の原因となる食習慣や食行動の影響の受けやすさを規定する遺伝子を同定するとともに、これらの食習慣・食行動を規定する遺伝子の同定に挑戦しようとする取り組みである。具体的には、生活習慣病の終末像として重要な心血管疾患に着目し、発症・進展の評価に重要な血管内皮機能を1つの指標として絞り込み、個人差を考慮した評価手法を確立するために食習慣・食行動に対する個人の感受性を規定する遺伝子を遺伝統計学的手法であるゲノムワイド関連解析法を用いて探索同定する方法を確立する。平成22年度は、具体的な手法を検討し、対象者の登録ならびに血液検査、血管内皮機能検査などのデータの取得を行った。まだ十分な被験者数が得られていないが、リン過剰摂取に対し、個人間で血清リン濃度上昇率や血管内皮機能に違いが見られるなどのデータが得られている。次年度は多変量解析などを進めるべく、今後被験者数を増やすと共に、得られたデータの解析を進め、内皮機能に影響を及ぼすような生活習慣因子について個人差を考慮した評価手法の確立に向けて取り組む予定である。
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