2004年、テキサス大学サウスウェスタン医学センターの柳沢正史らは、Gタンパク質共役型レセプター(GPCR: G-protein coupled receptor)の一つであるGPCR41のリガンドが驚くべきことに短鎖脂肪酸であり、脂肪細胞株や脂肪組織由来の初代培養細胞において、短鎖脂肪酸がGPCR41に結合してレプチンの発現を亢進させることを発見した。この発見は、食物繊維が有するメタボリック症候群抑制作用の分子機構を解明する強力な手掛であると考えられ、私達は、“難消化性である食物繊維は、消化管下部において腸内細菌によって資化されて短鎖脂肪酸を産生し、腸管から吸収された短鎖脂肪酸がGPCR41に結合するとレプチン遺伝子の転写を促進してレプチン産生を亢進させ、食物繊維による一連のメタボリック症候群抑制作用が発現する”、と推論した。本研究の目的は、上記の仮説を検証することである。実験動物SD系雄ラットに,5%セルロース含有無コレステロール飼料、5%セルロース含有高コレステロール飼料,5%ペクチン含有高コレステロール飼料の何れかを投与した。脂肪組織のGRP41遺伝子の発現量は、5%セルロース含有高CHOL飼料で約半分に低下したが、5%ペクチン含有高CHOL飼料では増加した。同様に、脂肪組織のleptin遺伝子の発現量は、有意差は無いものの5%セルロース含有高CHOL飼料で約半分に低下し、5%ペクチン含有高CHOL飼料では増加した。以上の結果より、ペクチン摂取により脂肪組織でのGPR41とleptin遺伝子の発現量が並行して変動する傾向が認められた。
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