精神疾患で入院する高齢者の栄養管理を支援することを目的として、平成23年度は以下の項目について調査研究を行った。研究フィールドは兵庫県播磨地域にある単科精神科病院(329床)である。 (1)精神医療機関での栄養調査 全入院患者285名のうち身体測定が可能と判断された174名(男性91名、女性83名)について体重、腹囲、体脂肪率を測定した。低体重の割合は男性が7%、女性では23%、肥満者の割合は男性27%、女性は46%であった。腹囲がメタボリックシンドロームの基準を上回っているものは男性では47%、女性では30%であった。2007年から2011年の5年間の連続して身体測定を受けた入院患者43名(男性29名、女性14名)については体重の推移を調査じた。なお、寝たきりなどで測定出来なかった入院患者も多く、実際の低体重者の割合はさらに大きいと判断した。 (2)栄養支援介入項目の調査 精神科特有の介入項目を明らかにするために看護スタッフに対して看護ケアについての調査を実施した。低栄養・低体重でNSTの対象となる患者の多くが高度の便秘、咀嚼機能障害、つよい精神症状などの要因を持つことが明らかになった。 (3)簡易質問表の作成 NSTに用いる簡易な栄養評価表としてMini Nutritional Assessment(MNA)の評価を行った。6カ月以上入院している療養病棟の65歳以上の患者76名に対して主観的包括的栄養評価(SGA)と比較検討した。MNAは栄養障害を持つ高齢精神疾患患者を十分に検出可能であることが明らかになった。 (4)連携システムの構成、スタッフ教育、遠隔栄養管理システムの運用 姫路北病院のインターネット環境がよくなくスムーズに実施できなかった。そのため最初だけ訪問してNSTを行う予定であったが、その後も調査のため医療機関を訪問した時(1~2回/月)に症例検討を行い、スタッフのレベルアップをはかった。
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