本研究の目的は,日常おこなわれる健康管理の利便性と簡便性向上のために,食事量の可視性と定量性を実現するための画像処理手法の開発と,その健康管理への貢献の有無を予備調査することにあった.具体的には,近年民生機器として普及が始まった3次元カメラを用い,被験者が日々の食事をデジタルカメラで撮影するだけで,摂取した量やエネルギーを計測・推定できるものを目指す. 最終年度である平成24年度はこれまで開発・作成してきたソフトウエアを実利用するという観点から,より使い安いシステムとなるような改良を加えた.具体的には(1)コンピュータビジョン技術に基づく定量計測ソフトウエアのユーザインタフェースの改良,(2)食事画像の形状や大きさの把握を促進するための可視化ソフトウエアの開発,を行なった.項目(1)では,ステレオカメラからの距離計測ソフトウエアを改良し,ユーザの指定する任意物体のサイズ計測(長さや厚み)を対話的に実行出来る環境を作成した.項目(2)においては,3次元CG技術を応用することにより撮影した食事画像の3次元形状を可視化することに成功し,項目(1)にその機能を組み込んだ.その際,大きさが既知の物体も同時に表示することで,3次元CGについての経験や知識に乏しい者であっても大きさの把握が容易になるような工夫を行なった. 本研究では,公衆栄養の専門家であっても食事量を推定することは難しいタスクであり,コンピュータにより,大きさや形状の把握に有効となる何らかの支援が必要であることを示した.本研究が目指した「食事量の計測」に加え,栄養指導における食事量計測のための補助手段としての有用性を確認した.
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