本年度は,コマ状の回転構造に対して電磁誘導を用いて電動機および発電機を実現する教材の開発を行うと共に,これまでの研究で提案・検討してきた教材である「カレントトランスフォーマーを用いた電流(電力)計測」,「直流モータの改造による交流発電機」,「電磁誘導による非接触エネルギー供給教材」などを用いた授業の提案を行った.また,これらに加えて各教材の学習内容の新学習指導要領における位置付けについて検討を行った. コマ状の回転構造は,電磁誘導により回転変位を検出する検出コイルと,検出コイルからの信号に基づいてコマを駆動する駆動コイルによって電動機を実現するもので,生徒が自作できる点,電磁誘導の様子を観察しやすい点にその特徴がある.この構造を発電機としても用いることで,電気から機械,機械から電気へのエネルギー変換が同一の構造で行える. 直流モータを改造した交流発電機では,これまでのギアボックスの活用に加えて,小学校,中学校に広く普及している手回し発電機を改造することにより,モータ内部の観察,生徒の手による改造,正弦波交流の出力などが行える教材となった.この教材では,電磁誘導を体験するだけでなく,よく知られた機器を自分の手で改造することにより,モータ内部の構造や発電メカニズムへの理解が深まることが期待される. さらに非接触でのエネルギー供給(給電)については,原理を確認する教材を開発した.これについては今後も教材開発を行っていく予定である. これらと並行して,これまでに開発してきた教材を用いた授業について,平成20年改訂の学習指導要領およびスマートエネルギーの観点から検討し,中等教育および高等教育向けの授業案を提案した. 今後は,学会講演等で収集した意見などを参考にしながら,Web環境での教材・授業案等の公開を行っていく予定である.
|