○本研究の主要テーマに関する成果として、2010年数学教育学会秋季例会の大学教育分科会において、講演題目「音楽を活用した大学における数学の教養教育について(3)」として、口頭発表を行い、学術論文として掲載された。学会講演に対して、数名から数学教育および音響学の観点から貴重なアドバイスとコメントを受けることができ、次年度の更なる研究の発展に結びつくものと考える。 ○研究計画に沿って数学および情報科学に関するセミナーや研究打ち合わせを通し、本学の教養教育科目「数理のひろがり」において、購入した音響機器を活用し、音響体験を取り入れた授業実践を行ない、数学の論理性や表現力に関して教育効果の検証を行うことができた。さらに、これらに関連する講義資料(A4判約50枚)を作成した。主な内容は以下の通りである。 (a)音の協和の原理からユークリッド互除法への発展 (b)アンケート調査による3和音のイメージと振動数比の関係 (c)音の高さに関するウエーバー・フェヒナーの法則の検証 (d)音階を題材にしたいろいろな平均の概念の考察 ○研究テーマのひとつである聴覚の錯覚に関連して、2010年12月開催の研究集会「錯覚の数理」に参加し、主催者である杉原厚吉教授(明治大学先端数理科学)や純粋数学の立場で数理的な研究の第1人者である新井仁之教授(東京大学大学院数理科学研究科)から、視覚の錯覚に関する情報処理のメカニズムと数理的なアプローチについて詳細な研究発表を聴くことができた。更に聴覚のメカニズムとの関連性について直接に有益なコメントをもらうことができ、今後の聴覚に関する錯覚の研究方法を見出すことができた。
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