1.本研究の成果として、図書1冊を執筆中である。書名は「音楽の中の数理」(仮名)で平成24年度中の出版予定である。内容は、ひとつは音楽に現れる数理、もうひとつは音響に関るものである。具体的に音を活用する例も多く盛り込んであり、実際の音の体験を通して数学の理解を深める工夫をしてある。 本研究課題に関連するテーマで、平成23年5月に山形大学理学部において、「サイエンスセミナー」での授業を依頼され、「音階の数理」というテーマで講義を行った。これは数学の授業に音響の体験を取り入れたもので、レスポンスカードによれば学生は新鮮さや興味をもって受講したようである。さらに、聴講した教員からは、楽器を用いて実際に実験を行い、概念の例になっている音楽を実際にテープで聴かせながら数理に関する授業を組み立てている点が評価された。 2.研究計画に沿って数学および情報科学に関する研究打ち合わせを行い、セミナーでの発表を行った。本学の教養教育科目「数理のひろがり」において、前年度購入した音響機器を活用し、音響体験を取り入れた授業実践を行ない、数学の論理性や表現力に関して教育効果の検証を行うことができた。さらに、これらに関連する講義資料(昨年度に追加分A4判約30枚)を作成した。 3.本研究テーマに関連して2012年3月に、錯覚の数理の研究の拠点である明治大学での研究集会に参加した。錯聴現象に関わる聴覚の情報処理のメカニズムについて興味ある発表を聴くことができ、質問にもていねいに回答してもらった。これは、音を数学教育に取り入れるのに適したテーマとなり得るもので、本テーマの更なる研究に大いに参考になった。
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