研究概要 |
1疑似科学的言説が用いられた学校教育の実態並びに疑似科学的言説に対する態度を調査するためのアンケート調査を実施した.調査対象は長崎大学教育学部1年生243名及び全学教育講義「疑似科学とのつき合い方」受講生166名(ほとんどが1年生)の409名である. (1)調査対象の9.3%にあたる38名が,小学校から予備校までの段階で「水からの伝言」を題材に用いた授業を道徳総合,国語,理科等の科目で受けていることがわかった. (2)疑似科学的言説に対する態度については,「マイナスイオンは健康に良い」「電磁波は人体に良くない」のようにメディア等で広く用いられている言説を正しいと考えている割合が半数を超えていることがわかった.また「ゲルマニウムは体に良い」「創造性を培うためには右脳を鍛えると良い」「ゲームをしすぎると脳が損傷を受ける」といった言説も1/3を超える割合で正しいと考えていることがわかった. 2「水からの伝言」(江本勝,波動教育社,1999)及び同書著者の書籍が主張する内容を詳細に調査した.その結果,これらの書籍は科学用語及び宗教概念を散りばめて創作したものであり,自ら行う商業活動で金銭的利益を得るための裏付け資料として用いられていることが明らかとなった.これらの主張は科学的には完全に否定できるものであり,学校教育においてはいかなる場面においても肯定的に用いることができない虚偽の言説であることを明らかにした. 3JNNデータバンクのデータベースを活用し,過去の研究で得られた結果の追試を行った.過去の研究では,使用可能なデータのうち一部のデータしか使用しておらず,安定した結果が得られていたのかが不明であった.過去の研究と同じ条件でデータ解析をしたところ,安定して同じ結果が得られたものとそうでないものがあることが判明した.
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