研究課題/領域番号 |
22650195
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
杉尾 幸司 琉球大学, 教育学部, 教授 (20433089)
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キーワード | 野外観察学習 / 学習プログラム / 教師支援 / 沖縄県 / 亜熱帯気候 |
研究概要 |
教師が野外において身近な動植物を観察・調査した経験を持つことは、野外観察学習を行う際はもちろんのこと、教室内での理科授業を進める際にも重要な意味を持つと思われる。しかし、亜熱帯気候に属し他府県とは異なった自然環境にある沖縄県においては、他県での自然環境を想定した指導書や参考書等は参考にならないことが多く、児童・生徒が郷土の身近な自然環境について知るための効果的な学習プログラムや教師を支援するための取り組みは十分ではないのが現状である。そのため、野外観察学習に興味を持つ教員が効果的に利用できる学習プログラムと教師支援システムの開発を目的に研究を行った。 今年度は、野外観察を実施する場合に好適なフィールドとして選定した末吉公園の植生についての詳細な調査を実施し、学習プログラムに活用可能な植生情報についての検証を行った。植生調査の結果に基づき、優占種と相観、立地条件などを基準にして群落の類型化を行なった結果、オオバギ優占林、アカギ優占林等の6タイプの自然林と、カジノキ優占林、モクマオウ優占林等の4タイプの人工林、計10タイプの群落が識別できた。これらめ結果から、本公園における植生は、約30年前に大部分を占めていたアカギやオオバギなどの陽樹が優占する林から、陰樹性の高い樹木が優占する林に変化していく過程にあると考えられ、今後は水辺ではホソバムクイヌビワが、土壌堆積地などではヤブニッケイが優占する林に遷移していくことが予想された。また、外来種であるタイトウウルシの生育が15か所で確認され、そのうち5か所には10m程度の高木が見られた。タイトウウルシの実生は計1491本が生育し、その多くは本種の高木の林床に分布していた。本種の強い耐陰性と枝葉を密に茂らせる性質を考えると、今後,在来植生を脅かす存在となる可能性が高い。今年度の研究によって得られた情報から、植生の遷移や外来種の侵入に関する項目についても学習プログラムに加えることが可能になるなど、フィールドの植生情報の蓄積が進み、今後の研究における重要な基盤情報を整理することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学習プログラムに必要な植生情報の集積が進んでおり、フィールド内のマッピング作業も順調に推移している。また、学習プログラムの検討を行う野外観察学習会等も複数回実施しており、研究における重要な基盤情報が順調に蓄積されている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で得られたデータをもとに、学習プログラム内容について検討を進め、改善を行っていく。また、この数年で急速に普及してきたタブレット型情報機器への対応についても研究を進める。
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