教師が野外において身近な動植物を観察・調査した経験を持つことは、野外観察学習を行う際はもちろんのこと、教室内での理科授業を進める際にも重要な意味を持つと思われる。しかし、亜熱帯気候に属し他府県とは異なった自然環境にある沖縄県においては、他県での自然環境を想定した指導書や参考書等は参考にならないことが多く、児童・生徒が郷土の身近な自然環境について知るための効果的な学習プログラムや教師を支援するための取り組みは十分ではないのが現状である。そのため、野外観察学習に興味を持つ教員が効果的に利用できる学習プログラムと教師支援システムの開発を目的に研究を行った。 今年度の研究では、これまでの研究によって得られた情報をもとにして、野外観察を実施する場合に好適なフィールドとして選定した末吉公園の植生の遷移や外来性植物の侵入に関する項目についての解析を行い、教材プログラムの内容の検討を進めた。 その結果、本公園は相観と利用形態から自然林を中心にした「森林保持エリア」と、人工的な植栽が中心で遊具などが整備されている「整備利用エリア」の大きく2つのエリアに区分でき、野外観察学習の場として、それぞれのエリアの特性に基づいた取り組みが可能であることが明らかになった。自然植生が残っている「森林保持エリア」では、約30年前に大部分を占めていたアカギやオオバギなどの陽樹が優占する林から、陰樹性の高い樹木が優占する林に変化していく過程にあることが明らかになり、この地域の植生の遷移を確認できる学習フィールドとしての活用が可能である。また、人工的な植栽が中心の「整備利用エリア」では、外来性のタイトウウルシが植栽されており、本種の実生の一部が自然植生へ分散している可能性が示唆された。そのため、外来種が在来植生を脅かす存在となっていくプロセスを学習する場としての活用が可能である事が明らかになった。
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