心理学の分野で好奇心には特殊的好奇心と拡散的好奇心の2種類が提案されている。このうち、特殊的好奇心の研究は、動物、ヒトを用いて新規刺激環境での反応を見る事で盛んに研究されている。しかし一方、退屈ないし情報への飢えより生じ、はっきりした方向性をもたず幅広く情報を求める傾向の拡散的好奇心の研究はほとんど見られない。本研究では、ヒトにおける拡散的好奇心は、前の作業に対する「飽き」として発現すると想定し、ヒトが拡散的好奇心を感じる時、つまりヒトが「飽き」を感じる時の脳波を測定する。本研究の結果から、脳波を用いてヒトの「飽き」が検出されれば、学習者の「飽き」を検出し、「飽き」が来ない学習教材を提供する教育システム構棄や、将来、ヒトがロボットと共生して生活する局面における、ロボットの行動制御アルゴリズムの開発に役立つものと期待される。 本年度は、昨年度に引き続き、当研究室で使用している英語リズム学習教材を用いて、繰り返し英語リズム学習した時の脳波を国際10-20法に従い頭皮上8点から測定した。また、作業中、飽きを感じた時に手を挙げるように指示をした。繰り返し回数は被験者に提示しなかったが、総合計時間は15分ほどであった。昨年度は、4-6回ほどの繰り返しで、被験者は飽きを感じ始め、それより前から、α波(8-13Hz)、β波(13-30Hz)のパワーが減少する事、またその時、θ波(4-8Hz)パワーは変化しない事を明らかにした。今年度は、さらに実験、及び解析を重ね、γ波パワーも減少する事を明らかにした。さらに、前頭部と後頭部のα波の同期具合を示す指標であるコヒーレンスの減少が、他の波に比べて有意であった。以上の結果より、「飽き」を示す脳波指標として、α、β、γ波パワー及びα波のコヒーレンスが候補として挙げられる。さらに、脳波を用いたブレインコンピュータインターフェース技術の実用化のために必要なドライ電極の開発をインタークロス社と行い、ゲル電極と比較し、その問題点を明らかにした。
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