建築細部意匠による建築年代の判定技術を科学的な水準にまで高めることを目的として、簡易な練習を積んだ者なら普遍的に容易に即座に建築年代判定が正しく行える判定指標を提示することが最終的目的であった。本研究では、蟇股と木鼻に限定し、13世紀から16世紀までの概ね中世の範囲で、京都・奈良などの中央とそれ以外の地方との差異を考慮して、完全なる年代判定指標を作成できた。 例えば、本蟇股の年代判定としては、脚の太さの上下差、足元の比例的大きさ、肩や内繰りの曲線における一筆目と二筆目の大きさの差異が挙げられる。1世紀を3等分する年代幅での、ほぼ正確で容易な判定を可能とするものである。 本研究の過程で明らかとなった、神社本殿の建築年代判定変更による神社建築史の再構成の成果として、一般教養書『神社の本殿』を出版した。また、本研究成果は、これから出版物として刊行する予定である。さらには、文化財指定建造物の建築年代の再考を順次行って、それぞれに関して研究発表あるいは一般書籍等で公表することを考えている。
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