本研究は、矯正施設退所者、いわゆる刑余者の出所後の地域での生活がどのように行われ、再犯に至らないような地域生活が定着して可能かどうか、そのための居住福祉支援の実効性を問う実践的な調査研究である。支援の主体として、研究代表者もかかわる刑余者のアフターケアを行う、日本で最も活動的な組織である、よりそいネットおおさかの活動が、本研究の主たる対象である。このよりそいネットの活動のフォローアップとその実効性の検証にあるといっても過言ではない。 最終年度にあたり、ホームレス支援団体とこの矯正施設退所者の重なり合いの強い福岡県の事例調査を行い、前々年度の埼玉県の事例も加え、ホームレス支援をベースに発展してきた大阪のよりそいネットの活動の方向性の比較分析を行った。研究の蓄積は、事実上、受け皿としての中間施設やハウジングに関して多くみられ、その受入が多数に上り、どのような居風福祉的支援が行われているかが、部分的に判明した。その集大成として、大阪での実績やスキルについてまとめた支援マニュアルの作成と、特に厳しい事例である性犯などへの支援メニューの開発などの段階に入ったと評価できる。 残念ながら、地域定着支援センターの全国比較については、個人情報の取り扱いの障壁があり、本科研プログラムでは取得データの分析、結果の公開までに至らなかったことは惜しまれる。この刑余者の見える化のスタート地点が、全国に広がる刑務所が中心となっているところが特徴的であり、また引き受け地域も大阪府であることケースが大変多く、引き続き、効果的な支援のあり方をさぐる必要性が高いことは間違いない。
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