研究課題
表面抗原は細胞外からの刺激を細胞内に伝達する役割を担っている。我々は過去にCD26、CD24、CD9などのいくつかの細胞表面分子は悪性中皮腫のがん幹細胞特性と相関することを報告してきた。しかしこれらのマーカーはどのようなシグナル伝達系を介し、いかなるヒストン修飾酵素の活性を変化させ、癌幹細胞に重要な遺伝子活性を誘導させるかその分子機構については詳細にされていない。そこで本研究ではその点について明らかにする。この目的のために我々はCD24及びCD26陽性の悪性中皮腫株の癌幹細胞特性を検討した。まずそれぞれのRNAiを用いてでノックダウン細胞を確立したが、これらのマーカーはin vitroでの化学療法剤抵抗性、増殖及び滲潤能力と有意に相関していた。興味深いことに、例えばMeso-1株はCD24及びCD26陽性であるが、これら2つのマーカーはそれぞれが異なった癌幹細胞特性と相関していた。さらにマイクロアレイでこれらマーカーの下流シグナルを解析したところ、これらの発現はいくつかのがん関連遺伝子と相関した。さらにEGF刺激によるERKのリン酸化はCD26の発現により影響されたが、CD24の発現には影響されなかった。さらにCD26分子の発現とヒストン脱ユビキチン酵素のUSP22の発現は密に関連していることも明らかになった。これらの結果からCD24とCD26分子は悪性中皮腫の癌幹細胞特性を別個に制御しており、それぞれ癌幹細胞に基づく有望な治療法ターゲットになる可能性が示唆された。
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