研究課題
我々は、モデル抗原としてOvalbumin(OVA)を用い、OVAのMHC class IとMHC class IIエピトープ配列、αヘリックス構造などのタンパク質安定化配列、無作為配列などのペプチドモチーフ配列がコンビナトリアル(組合せ的)に、多数繰返した人工タンパク質ライブラリーを作成した、この中から、人工タンパク質32種類を精製し、抗原提示細胞(樹状細胞)に添加し、OVA特異的エピトープを認識するT細胞と共培養、IL-2産生能を測定する事で細胞性免疫の誘導能を評価した。その結果、0.5μMの濃度でクローンF182AおよびF37Aで細胞性免疫誘導が認められた。OVAでは、50μM以上の濃度でないと細胞性免疫誘導能は認められなかった。このように、我々はOVAよりも100倍もの低濃度で、タンパク質のみで強い細胞性免疫を誘導できる人エタンパク質の創製に成功した。マウスにこれらの人工タンパク質を投与し免疫誘導能を評価した。その結果、テトラマーアッセイ、細胞障害性アッセイにおいて、in vivoにおいても、人工タンパク質はOVAに対する細胞性免疫誘導能を持つ事が明らかになった。人工タンパク質を免疫後、OVAを発現する腫瘍細胞EG7-OVAを皮下投与し、腫瘍の成長を測定した。その結果、F182AおよびF37A投与群では、非免疫群と比較して、腫瘍増殖の抑制が認められた。さらに、免疫マウスの血清を採取し、ELISA法にて抗OVA抗体の誘導能について評価した結果、抗OVA抗体が誘導されており、人工タンパク質はOVAに対する液性免疫も誘導できる事がわかった。本研究により、我々は、アジュバンドを用いずに、タンパク質のみで、腫瘍免疫療法の本体である細胞性免疫を誘導可能にする、革新的な腫瘍免疫療法を開発するうえでのモデル抗原タンパク質を用いた概念証明実験に成功した。
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